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「役に立たないものにこそ」東浩紀 文化と経済の関係を語る

J-WAVE平日(月~木)夜の番組「JAM THE WORLD」 (ナビゲーター:津田大介)のワンコーナー 「BREAKTHROUGH」。2月24日のオンエアでは、作家・思想家の東浩紀さんと一緒に、 最近の気になる話題や適正な物の値段について考えました。

まずは最近の“あの発言”が俎上に載せられました。一つは、 11日付の産経新聞の朝刊に掲載された、作家曽野綾子さんのコラムの問題。 アパルトヘイトを称揚しているのではないかと海外メディアなどから抗議が押し寄せる事態となりました。 もう一つは、19日の予算委員会においての安倍首相の民主党議員へのヤジ。 「日教組」という、質疑と全く関係のないヤジだったため、不可解さが残りました。 どちらに対しても、当初、日本のメディアは軽く受け流していたわけですが、いつから、 日本はそういう意味での失言に緩い国になってしまったのでしょうか。

東さんは「なんか引っかかるけど、別に騒ぐことのほどじゃないよね、 というような空気が作られていますね」と言います。 根底には安倍政権になってから、経済がうまく回っていれば、 多少のことはスルーしようという空気があるのだと推測します。 また、経済第一主義に由来する、生の欲望、生の力だけをぶつけるような 言葉が多くなってきていることに警鐘を鳴らします。 「本音主義の社会では文明も作れないし、文化も作れない」と。

さらに東さんが考える適正価格についても聞きました。東さんは、 今は書籍の価格が安くなりすぎて、もう著者が全然食べていけない というような問題提起をツイッターでしています。

「僕が言いたいのは、一般教養書というのをもう少し値段を上げるべきだということなんです。 つまり、なんとなくイスラム国について知りたいとき、 1000円ぐらいで本が手に入ると思っちゃうとわけですよ。 ただ、やっぱりイスラム国について知るってなかなか大変だし、 ジャーナリストだって命がけで行っているわけです。それに対して、 3000円ぐらい対価を払おうよという状態にしないと、次世代の書き手やジャーナリストが育たないと。 飲み屋で4、5000円出すことを考えれば、いろいろな商品のバランスの中で、僕は書籍が安すぎると思います」(東さん)

話題は東さんが近々開講するアートスクールにも。 東さんは開講する理由について次のように語りました。

「今の時代って、役立つとか、売れるとかということに、 みんなが価値を置いているわけだけど、そもそも人間って売れるからとか、 役立つから友達になるわけじゃないし、人と愛し合ったりするわけでもないし、 人にものを教えたりするわけでもないわけですよね。そういう別の基準があるからこそ、 本当は社会って成立しているのに、社会の大きな枠組みを説明しようとすると、 それこそ何が役立つかという話になってしまう。そういう中で役立たない 話ができる場所というのがあっていいと思うんです」(東さん)

アートや小説や哲学など、「役に立たない」と言われてしまうものにこそ、 実はお金をかける価値があるのかもしれませんね。 考えさせられることが盛りだくさんのオンエアでした。

【関連サイト】
「JAM THE WORLD」オフィシャルサイト
https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

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