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沢木耕太郎が、山本周五郎のお墓で「申し訳ない」と謝罪した理由

沢木耕太郎が、山本周五郎のお墓で「申し訳ない」と謝罪した理由

J-WAVEで12月24日(月・祝)にオンエアされた『J-WAVE CHRISTMAS SPECIAL 沢木耕太郎 ~ミッドナイト・エクスプレス 天涯へ 2018~』(ナビゲーター:沢木耕太郎)。この番組は、毎年12月24日の夜に、作家・沢木耕太郎が、自身の日常やリスナーからのメッセージに答えながら、この1年を振り返るスペシャルプログラムです。


■山本周五郎のお墓を訪ねて…

沢木:「今年一年、あっという間でした」っていうセリフをいつもだったら言ったかもしれませんけど、今年はあまりあっという間じゃなくて、わりとしっかり長かったような気がします。今年前半は山本周五郎のアンソロジーを出したり、そして今年の後半は僕自身のエッセイ集を2冊出しました。それに集中していた1年だったため、短くはなかったです。本当は年内に書き上げなければならなかった長編小説が完成しなかったので、あまり良い年とは言えないのかもしれませんが、それでも今年1年「悪くはなかった」と感じています。

そんな沢木が編集をつとめ、今年出版された『山本周五郎名品館Ⅰ・II・Ⅲ・Ⅳ』。こちらは昨年、没後50年を迎えた山本周五郎の300編ほどにもなる短編から、36編を4冊にまとめたものです。沢木は先日、鎌倉にある大学時代の恩師のお墓参りに行った際、たまたまその近くにあった山本周五郎のお墓も訪ねたそう。

沢木:山本周五郎にはふたつ断らなければいけないことがあって。ひとつは、実は版権というのは作家の死後50年経つと切れるんですね。で、山本周五郎は今年で切れたわけです。それを見越して山本周五郎の本を各社出しているわけですが(笑)、僕が編纂したのも同じで、山本周五郎のご遺族には印税がぜんぜん入らないんです。ところが僕は編集した人間として、いくらか印税をもらうことになる。それで山本周五郎に「申し訳ありません。そちらに入らずに僕がもらってしまいました」と……。

そしてもうひとつは、山本周五郎の生き方について。作家は文芸作品の選考員など、文章を書く以外の仕事をすることもありますが、山本周五郎は生涯、文章を書く以外は何もしなかった人でした。

沢木:文章を書くだけで生きてきた。良いものを書けば読者は待っていてくれると読者を信じ、生きてこられた方でした。僕もどこかで山本周五郎の生き方には、本当にわずかですけども影響を受けていて。

たとえば沢木のところにも大学の講師や選考員など依頼が来ますが、沢木はすべて断り、「雑誌や本で読者と繋がること以外ではお金を稼がない」と決めていると話します。そのスタイルを貫けているのも、山本周五郎がそのような生き方をしていたからかもしれない、と沢木。

沢木:「印税、申し訳ありません。それと生き方については、どこかで模倣しているところがありますが、それは深く感謝しています」と言って、お墓参りをして、鎌倉霊園を出ました。


■明石町の美人の秘密

お墓参りを済ませたあと、時間があった沢木が鎌倉の街をぶらぶら歩いていると、「鏑木清方記念美術館」を偶然見つけ、入ることにしました。鏑木清方とは明治から昭和にかけて活躍していた浮世絵師で、沢木は「美人画を描いた人」という程度の知識しかなかったのですが、心に残っている人物だと言います。

というのも以前、沢木の父の友人から、父が書いた「隅田川」というエッセイを送ってもらったことがあり、その中の一節に「清方が描いたような美人が果たして明石町にいたものやら(略)」と書かれていました。明石町は沢木の父がかつて住んでいた、中央区築地の一角。

沢木:清方が描いた美人画のような人が、明石町にいたのかなって、そういうぐらいに思っていたんですね。だけどなんか心にうまく収まらなくて、気になってはいたんです。

たまたまながらも、そんな思いもあって入った「鏑木清方記念美術館」。そこには様々な作品が展示されていましたが、その中に「『築地明石町』の下絵」というのがあったのだそうです。

沢木:「築地明石町」っていうのが、清方のいわば代表作で、それの下絵です。ただ線だけの美人画ですね。それが展示されていて、そこで初めて知ったんですけど、「築地明石町」という清方が描いた美しい女性の和服を着た美人画、それが清方の代表作だったんですね。で、親父の書いた「清方が描いたような美人が果たして明石町にいたものやら」というのは、その「築地明石町」という清方の代表作を指していたんです。

父がエッセイの中で書いていた「築地明石町の美人」とは、まさにその絵に描かれた女性であることを初めて知った沢木は「すごく腑に落ちた」と語っていました。

その他、番組では、数年ぶりに行ったマカオで、沢木がふと思いついたというバカラの必勝法を実戦してみたエピソードが語られました。年に1度の番組、ぜひradikoで聴いてみてください。

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【番組情報】
番組名:『J-WAVE CHRISTMAS SPECIAL 沢木耕太郎 ~ミッドナイト・エクスプレス 天涯へ 2018~』
放送日時:12月24日(月・祝) 24時-27時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/sawaki2018/

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