裁判員制度施行から10年 変化した点と今後の改善点を専門家が解説

2019年05月30日

画像素材:PIXTA

先日、裁判員制度が施行からちょうど10年を迎えました。裁判員制度によって日本の刑事司法がどのように変わったのか。共同通信編集委員兼論説委員で、『知る、考える裁判員制度』(岩波ブックレット)などの著書もある竹田昌弘さんにお話を伺いました。

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■「無実の人を罰しない」という大前提がより顕著に

裁判員制度を取材し、それを総括する記事も書いている竹田さん。施行から10年経っての評価としては、「無実の人を罰しない」という理想に近いものにはなっている、と捉えているそうです。竹田さんは、裁判とは「有罪か無罪かを決める場所」ではなく、「有罪か、有罪でないかを決める場所」だと言います。

竹田:この間、裁判官の方が裁判員と話をしていると、「裁判官特有の思い込みやバイアスに気づかされた」と正直にお話になっている方がいらっしゃいました。毎日やっていますから、裁判官にはそういう予断や偏見みたいなものがどうしても入ってしまう。裁判官にとって被告人はワンオブゼムですが、裁判員にはそういうことはない。オンリーワンの被告人と向き合って、予断、偏見なく判断しているという意味で、非常にいいなと思っています。実際に、非常に有罪率が下がった。これは無罪が多いということです。「無実の人を罰しない」という理想に近いものになっています。

それは実際に有罪率にも現れています。死刑や無期懲役といった重い罪を中心に裁判員裁判の対象となるなかで、裁判官だけでやっていた2006年から2008年は有罪率は99.4%。それが10年前に裁判員裁判が始まり、昨年は98.1%、一昨年は97.9%と、1.5ポイントほど下がっていることがわかります。


■裁判員制度施行前と比べて変化した点

裁判員制度が始まって、刑事司法において変化した点はどこでしょうか。

まずは、「施行前より証拠が開示されやすくなったこと」が良い点として挙げられました。また、量刑についてもあきらかな変化が見られると言います。

竹田:これまで、親の介護に疲弊して殺してしまったといった親殺しには、執行猶予はなかなかつきませんでした。一方、育児ノイローゼなど子どもを殺してしまった場合は、比較的執行猶予がついていたんです。それが、裁判員裁判になってからは(どちらも)執行猶予がつくようになっています。
青木:これは「介護って大変だよね」とか、そういう一般的な市民感覚が入ってきたということですね。だからといって殺人が許されるわけではないんだけれど。

また、性犯罪についても非常に刑罰が重くなったと竹田さん。

竹田:昔、2001年に女性裁判官にインタビューしたことがあります。そのときに、「性犯罪の刑が軽すぎる」と。その方は「10年かかってでも平均1年でも刑期を上げたい」とおっしゃっていたんですが、裁判員制度が始まって2、3年であっという間に1年以上重くなりました。法律も変わり、それまでいちばん軽いものは2年だったのが、3年から5年以上になりました。そういう意味では、裁判員裁判の威力はすごくあるんですね。市民感覚、社会常識が反映されたものとしていいと思いました。


■裁判員は有罪かどうかだけを判断すべき

量刑に幅ができた一方で、裁判員が検察官の求刑を超える重い刑を言い渡し、裁判官から説得される場面があったり、裁判員に選ばれたものの辞退する人も多いなど、まだ問題点もあります。

青木:いろんな課題や問題点が見えてきていますが、裁判員裁判というものは今後どうすべきか。改善すべき点はあるのか、それともいっそのことやめたほうがよいのか。どう思われますか?
竹田:裁判員は有罪かどうかだけを決めればいいと思います。今お話ししたように、量刑は長い時間評議をやって、裁判官が裁判員の意見を説得する場合もあるわけですから。だったら、量刑はもう最初から裁判官が決めればいいわけで。そして対象事件を絞るのではなくて、すべての刑事事件を対象にしたらいいと思います。つまり無罪を主張する人は裁判員裁判を選んでいく。要するにアメリカの陪審員裁判に近くなりますけど。

裁判員裁判についてもっと深く知りたいという方は、竹田さんの著書もぜひ手にとってみてください。

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