「笛木醤油」は、木の桶で2年間発酵・熟成…代々受け継がれた醸造方法とは

2019年08月07日

J-WAVEで放送中の『VOICES FROM NIHONMONO』(アンバサダー:中田英寿、案内役:レイチェル・チャン)。中田英寿が47都道府県を巡る旅で出会った日本の"ほんもの"の作り手たち、日本の"ほんもの"=「に・ほ・ん・も・の」を紹介する番組だ。8月3日(土)のオンエアでは、中田が埼玉県比企郡川島町にある「笛木醤油」へ向かった。


■代々受け継がれた「木桶文化」

「笛木醤油」は1789年創業で、今年230周年を迎えた。「笛木醤油」はもともと田畑を手がけながら兼業で醤油づくりを始めたという経緯がある。それ以来、木の桶で2年間発酵・熟成させて醤油を生み出すという伝統的な醸造方法を守り続けている。また、笛木一家が代々「木桶文化」を受け継いできたのも大きな特徴だ。さっそく、12代目・笛木吉五郎に話を訊いた。

中田:焼酎も日本酒もそうなんですけど、季節労働じゃないですか。醤油はどうなんですか?
笛木:醤油もありますね。一番適した時期は寒い冬。仕込み水が冷たいので、変な雑菌が入らないんです。緩やかに発酵させることが大事なので、冬に仕込んで春の3~5月で暖かくなって、ゆっくり発酵して夏場を迎えるというのがお醤油づくりとして最適ですね。

現在、醤油蔵の数は全国で1230社ほど。醤油の生産量は、千葉、兵庫、愛知が上位を占め、埼玉はそれほど多くない。埼玉の醤油蔵の数は10蔵で、60年ほど前まではおよそ70~80あった。笛木は、「川島町は昔、お醤油の原料である大豆と小麦が非常に豊富にとれたので、お醤油の産地と言われていました。ただ、時代によっては厳しい時代もありまして、今は10蔵になってしまいましたね」と話す。

中田:味噌と醤油の両方をつくっているところが多いですが、こちらは?
笛木:うちが製造しているのはお醤油のみです。一般的なお醤油は、ステンレスのタンクでだいたい半年で発酵・熟成していますが、うちは大きな木桶で約2年間発酵・熟成させています。「金笛」というブランド名です。
中田:100パーセント木桶ですか?
笛木:そうです。
中田:今、木桶は何本ありますか?
笛木:今41本です。埼玉でも多いですね。

醤油の原料は、大豆、小麦、塩。埼玉県の小麦生産量が全国7番目に多いことから、「笛木醤油」では100パーセント埼玉県産の小麦を使用している。では、ほかの原料はどうだろうか。

笛木:大豆は、うちが占める仕込みの量だと4分の1くらいが埼玉県産ですね。埼玉県産大豆の「里のほほえみ」というすごくいい品種があるんですけど、うちも年間を通して生産している会社なので、埼玉県以外にも、茨城、新潟、富山の国産大豆をほぼ使っています。塩はメキシコ産の天日塩。
中田:その塩を選んだ理由は?
笛木:ある程度安定供給できて、品質の高いものがメキシコの塩です。ほかにも、塩分濃度やミネラルの高さ、醤油製造に適しているという点があります。変な塩だと塩角がピリッと残っちゃうんです。それを残さないためにも木桶で2年間発酵・熟成させますが、塩もとても重要だと思います。
中田:木桶とステンレスで、発酵の早さは変わりますか?
笛木:変わりますね。ステンレスのタンクで温度管理できれば、一気に夏を持ってくることができます。「速醸(そくじょう)」といって、温度を上げて発酵・熟成を早めてしまう。ただ、うちみたいな小さな会社は、いわゆる天然醸造というか自然の状態なので。
中田:自然の酵母がつくのを待つということですね。
笛木:そうです。菌がどんどん増えていくのを待ちます。寒い時期はほとんど発酵しないので、その時期の発酵は緩やかで夏場に一気に発酵が進み、また少し落ち着いて、もうひと夏寝かせるというのが、江戸時代から変わらないうちのやり方です。


■木桶にこだわる理由

埼玉県比企郡川島町は「江戸の台所」といわれる川越藩に属していた。その頃から木の桶でゆっくり時間をかけてつくってきたのが「笛木醤油」だ。しかし、木桶を作る職人はどんどん少なくなっている。

中田:木桶を作る会社がほぼないと思いますが、どうされていますか?
笛木:「木桶職人復活プロジェクト」をおこなっています。3年間毎年、長崎や大阪から木桶職人さんに来ていただいて、桶を毎年1本ずつ作る制作活動をしてもらっています。基本的には杉と竹で作ります。ヒノキは香りがつきすぎてしまうので、うちは杉にしています。一番古いものは明治初頭の約150年前の桶がまだ残っています。他も、だいたい100年ほど前の桶です。

「笛木醤油」では、木桶帳に「いつ・どこに・なにを・どれくらいの量を保管していた」など、細かく記録している。

中田:木桶を仕入れたりもするんですか?
笛木:仕入れたほうが安いこともわかっているんですけど、自社で木桶の文化を、働いている人や地域も含めて、理解して一緒にやっていこうということが大事だと思っています。そのために職人さんに来ていただいて、だいたい10日間の住み込みで作っていただいています。お金はかかりますが、これが将来の地域の宝になってほしいと思い3年間継続してやっています。うちは木桶部というものを作りまして、非常に手が器用な製造現場のものがおりまして、今年1月に職人さんのもとに修行に行ったりしています。
中田:木桶が壊れなくても竹をしめなきゃいけないですからね。あれも意外と大変ですよね。
笛木:大変です。山梨県の「五味醤油」さんが、自分たちで味噌を作っている桶のタガが外れてどうしようもないとすごく悩まれていて、でも職人さんがほとんどいない。それに、長崎や徳島からお呼びするとなるとコストもかかってしまう。もしうちの職人が育っていけば、たとえば関東エリア内で桶のタガが外れたのをみるだけでもできれば、関東エリア内の木桶の文化を守れるのではないかと思っています。
中田:なぜ木桶にそこまでこだわるんですか?
笛木:お醤油は人間が携わってつくっていくものだと思っています。そして、我々以上に、1日24時間365日お醤油をつくってくれているのは、麹菌、乳酸菌、酵母の微生物。その微生物が一番快適な環境が木桶なんです。時間を重ねれば、菌が戦っていい菌が残る。その菌が「笛木醤油」の味を醸してくれるので、単純にはできないですね。あとは、私が木桶に魅了されまして。木桶は美しいもので、日本の文化はちゃんと残したいという思いがあり、徹底的にこだわっています。

230年間変わらず多くの人に愛されている「笛木醤油」。その味、作り手の思い、そして日本文化を守りたいという強い意志が伝わるオンエアとなった。この機会に「笛木醤油」をぜひ味わってみてほしい。

この記事の放送回をradikoで聴く(2019年8月10日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『VOICES FROM NIHONMONO』
放送日時:毎週土曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/nihonmono/
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