『天気の子』で、新海監督は次のフェーズへ進んだ! 有村 昆が「夏休みに観るべき映画」をセレクト

2019年08月08日

大作映画が続々と公開を迎える夏。今年のお盆休みも、充実したラインナップが揃っている。映画コメンテーターの有村 昆が「夏休みに観るべき映画」を紹介した。

【8月7日(水)『STEP ONE』の「BEHIND THE SCENE」(ナビゲーター:サッシャ、増井なぎさ)】
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■『天気の子』は「セカイ系ではないひとつの答え」を描き出す

現在、公開中の新海 誠監督の最新作『天気の子』は、これまでの新海監督作品とは異なる点があるという。

新海監督作品は「セカイ系」と呼ばれる作品として位置づけられてきた。セカイ系とは、簡単に説明すれば、"キミとボク"の関係性が、世界の危機に直結する......というような構造の物語のことだ。代表的な作品に『新世紀エヴァンゲリオン』などがある。

有村:新海さんのどの映画にも、登場人物は"キミ"と"ボク"しか出てきません。主人公の少年は「"キミ"が"ボク"のことを好きかどうか」しか興味がないんです。平成の時代は、このセカイ系は「こじらせ男女」の象徴でした。それで『君の名は。』もヒットしました。

ところが、令和の時代になって公開された『天気の子』では、「セカイ系ではないひとつの答え」がエンディングに表れていると有村は述べる。

有村:"キミ"と"ボク"の映画ではありますが、初めて新海さんの映画の中に雑誌社の編集長や警察官など、さまざまな大人たちが出てきます。子どもたちから大人を見たときの「果たしてボクらの味方であるのかどうか」という視点が『天気の子』に入っています。

有村が「極めて挑戦的」と話すそのエンディングを観た大人からは、批判的な意見も少なくないという。しかし、子どもたちはおおむね好意的な印象を持っていると有村。「ぜひ劇場で楽しんでいただきたい」ということで、詳細は明かさなかったものの次のように感想を述べた。

有村:子どもたちは今の社会を信用していないのではないか、という感じがしました。つまり、1970年前後のアメリカン・ニューシネマです。当時のアメリカは、ベトナム戦争により経済が疲弊し、ひどい世の中になっていました。そして、「僕たちは政府を信用しない」という動きが映画界でも起こったわけです。それと同じような現象が『天気の子』にも表れているのではないかと思います。新海監督が『君の名は。』から次のフェーズにいった感じですね。

『天気の子』では、RADWIMPSが音楽を担当している。ナレーションとかセリフではなく、音楽で表現していると、新海の手法を分析。

有村:これが新海監督の発明です。だから、説明的な感じが全くしません。歌詞を聴いていると、ストーリーを説明してくれているんです。そこも素晴らしいです。


■「何度も殺される」ホラー! だけど感動できる!?

有村が「『天気の子』の真裏でバズってる」と紹介した映画が、『ハッピー・デス・デイ』と『ハッピー・デス・デイ 2U』。

有村:最近観た中でナンバーワンです。めちゃくちゃ面白かった! 最初は「ちょっとエグいホラーかな」と思うんですが、最後は感動するんです。

『ハッピー・デス・デイ』の主人公は遊んでばかりいるツリーという女子大生。自分の誕生日の夜に殺人鬼に殺されてしまうのだが、目を覚ますと誕生日の朝に戻っている。それを繰り返して、同じ日を何度もループするというストーリーだ。

有村:「ここではこんな危険がある」ということを死んで覚えていくんです。次はそれを回避するけど、やっぱり死んじゃってまた朝に戻る。犯人を見つけないとこの迷路から抜け出せないということで、真犯人に辿り着くのか、というのが『ハッピー・デス・デイ』。

『ハッピー・デス・デイ 2U』は続編だ。

有村:今までサブキャラだった、端っこにいたような人が主役になったりするんです。しかも多重構造で、途中からSF要素も入ってきて、最後には誰もが「嫌な女の子だな」と思っていたツリーが、ものすごく愛おしくなってしまうんです。


■エルトン・ジョンの半生を描く、ミュージカル仕立ての作品

ミュージシャン、エルトン・ジョンの半生を描いた『ロケットマン』。『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットもあり、最近はこのような映画がひとつのジャンルムービーになりつつあると有村。「大ヒットするでしょう」と太鼓判を押す。『ボヘミアン・ラプソディ』と異なる点について解説した。

有村:『ボヘミアン・ラプソディ』は、フレディ・マーキュリーがどうやって曲を作っていったかというレコーディング風景とかからライブシーンに繋がっていく。ミュージカル映画ではなかったんです。『ロケットマン』は、エルトン・ジョンの生い立ちや生活の中に音楽が入ってくるという、ミュージカル仕立てになっているんです。

映画では、エルトン・ジョンのセクシュアリティと、創作の苦悩も描かれる。

有村:エルトン・ジョンは曲しか作れなかった。詞が書けない。そこで、バーニー・トーピンという作詞家と出会って、ふたりで作っていくんだけれども、エルトン・ジョンはゲイであり、バーニー・トーピンのことが好きなんです。でも、バーニー・トーピンは女性が好きなんです。けっきょく永遠に結ばれない。エルトン・ジョンが自分の詞を書けなかったのは、ゲイであることをしばらくカミングアウトできなかったからなんです。その苦しみが曲を作らせる、そしてエルトン・ジョンというアーティストを作らせる。なぜ彼があれだけ派手なコスチュームで登場するのかというと、自分を表現することを鉄壁の鎧で守りたかったからなんです。

「『ボヘミアン・ラプソディ』にハマった方にも、ぜひご覧いただきたい」とオススメした『ロケットマン』は、8月23日(金)に公開される。

『天気の子』

■黄金時代のハリウッド映画界を描く

最後に紹介したのは、8月30日(金)から公開されるクエンティン・タランティーノ監督の最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが共演していることでも注目されている。

1969年、ハリウッドの黄金時代に、女優のシャロン・テートが殺害される事件が発生した。この事件を絡めた作品だ。

有村:これもめちゃくちゃ面白かった! スティーブ・マックィーンとかブルース・リーなど、実在した人物が出てくるんですけど、リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)とクリフ・ブース(ブラッド・ピット)だけ架空の人物なんです。

タランティーノは映画マニアということもあり、「最初は"シュチュエーションあるあるムービー"」なのだという。

有村:「あのときのハリウッドスターはこんな風にハチャメチャに遊んでた」と。ただ、途中から暗い影が落ちてきて、カルト教の集団が出てきて、「なぜシャロン・テートが殺されたのか」ということが明らかになっていく。不思議な映画で、ものすごく楽しい映画が途中からサスペンス要素に変わっていく話です。

「残り20分からが勝負。すごいオチです」と締めくくった。

最後に有村は「『セクシャルマイノリティを日本では、こういう風にアレンジするんだ』というのがよくわかる」と、8月23日(金)公開『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』もオススメした。有村が紹介した映画をぜひチェックしてみてほしい。

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番組名:『STEP ONE』
放送日時:月・火・水・木曜 9時-13時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/stepone/
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