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本屋大賞「翻訳小説部門」1位の著者が放つ! 最新作『刑罰』は形容詞がない…?

本屋大賞「翻訳小説部門」1位の著者が放つ! 最新作『刑罰』は形容詞がない…?

J-WAVEの番組『BKBK(ブクブク)』(ナビゲーター:大倉眞一郎、原カントくん)。本や映画に詳しい大倉眞一郎と、複数のメディアに携わる編集者・プロデューサーの原カントくんが、大人が興味を惹かれるモノについて縦横無尽に語り合う。

9月3日(火)の放送では、2012年の本屋大賞「翻訳小説部門」で1位に輝いた、フェルディナント・フォン・シーラッハの新作『刑罰』(東京創元社)を大倉が紹介した。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年9月10日28時59分まで)


■「形容詞」がない!? 特殊な文体で書かれた短篇小説

『刑罰』は、弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの哀しさ、愛おしさを鮮やかに描いた短篇集。手に取ってパラパラっと読んだときに衝撃が走った大倉は、そのまま購入し、すぐに家で読んだのだとか。

大倉:普通、ドイツ人の小説って、なんか腰が引けると思うんだけどね。
:もう今引いてます、僕。
大倉:この本はね、ドイツの"裁判"に関連する内容が中心で、11篇収録されているんだけど、1篇が非常に短いんですよ。
:(本の)この厚さで11篇ってことはすごく短いですね。
大倉:で、何に驚いたっていうと、文体に「形容詞」がほとんどないんです。
:「形容詞」がない......?
大倉:事実のみを並べたような、非常に特殊な文体なんです。だから、恐ろしいくらいに読みやすい。余計なことが書いてないから。それでいて、余韻がすごく残るんです。
:面白そう...! 短篇集ってことは、なんらかの連携があるんですか?
大倉:一切ないですね。
:てことは、一篇だけ読んでも(物語として)成立してる......?
大倉:そうそう、成立してる。

そのうちの一篇の内容はこうだ。

大倉:ドイツって参審制っていうのとっていて、日本でいう裁判員制度みたいなものなんだけど、これって任期制なんですよ。5年やらなきゃいけない。で、優秀だけど異性とうまくコミュニケーションが取れない主人公の女性が、この参審制の参審員に任命されてしまうんです。ドイツの場合、断れないんです。それで初めて担当する裁判が、夫から妻へのDV裁判で。今回有罪になれば執行猶予がつかず、実刑になるというその裁判で、彼女は被害者の女性に心を重ねてしまって、激しく泣いてしまうんです。それでこの裁判が流れて、釈放された男は妻のことを殺してしまうんです。

自責を感じ、もう続けられないと思った主人公の女性は、「参審員を降ろしてくれ」という嘆願書を出すが、却下される。

大倉:......ここで終わる、それだけの話なんです。余計な形容詞がない分「このあとどうやって生きていくんだろう」とか「人に刑罰をくだす覚悟」だとか......いろいろ考えさせられるんですよね。
:余韻がすごいですね...。大倉さんの話を聞いて、小説苦手ですけど、チャレンジしてみたくなりました。短篇だし、読みやすそうですね。

フェルディナント・フォン・シーラッハの『刑罰』、興味を持った方は手に取ってみては。

『BKBK』では、本、旅、映画、音楽など、大人たちが興味を惹かれるものについて大倉眞一郎と原カントくんが語り合う。放送は毎週火曜の26時30分から。お聴き逃しなく!

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年9月10日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『BKBK』
放送日時:毎週火曜 26時30分-27時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/bkbk/

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