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芥川賞、これまでに180作品が受賞…その中でも「読むべき3冊」は

芥川賞、これまでに180作品が受賞…その中でも「読むべき3冊」は

秋も深まったものの「読書の秋」を楽しむ人は多くないそう。活字離れが叫ばれる昨今、毎日新聞が実施した「読書世論調査」によれば、1か月の平均読書量は、書籍は1.1冊だという。そんななか10月27日から11月9日は「読書週間」ということもあり、日本で一番有名な純文学の賞、芥川賞について『芥川賞ぜんぶ読む』の著者でフリーライターの著者菊池良さんに訊いた。

【10月31日(木)『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』の「MORNING INSIGHT」(ナビゲーター:別所哲也)】


■芥川賞180作品を読んでわかった、受賞作の傾向

別所:『芥川賞ぜんぶ読む』は、本の厚さからも芥川賞の歴史を感じます。芥川賞は84年間で180作品あるわけですよね。なぜこういった試みをされたのですか?
菊池:芥川賞って日本で一番有名な文学賞だと思うんですが、実際に何が書かれているかというのは、意外と知らないなと思いまして。その謎を解き明かしたいと思ってやりました。

その後「原則として単行本で150ページぐらい」といった、芥川賞の選考の対象や選考方法を説明していった菊池さん。全ての作品に目を通してみて、時代を反映した作品の受賞が多く、ファンタジーや時代劇はほぼ受賞しないということにも気づいたそう。また、時代の移り変わりによって「戦争の爪痕やアメリカ基地問題」「自己実現」「実存主義」と、受賞作品のテーマにも変化があることを解説した。


■芥川賞受賞作、おすすめはこれだ!

1年をかけて全作品に加え、審査員の選評に目を通したという菊池さんが、おすすめの芥川賞受賞作を3つ紹介した。

村上龍『限りなく透明に近いブルー』

菊池:これは基地問題を扱った、当時のロックに耽溺(たんでき)する若者の風俗を非常に的確に取り入れた作品でして、読んでいてすごく格好いいですし、その時代の空気も色濃く出ています。
別所:時代の空気感というのは、どのような?
菊池:基地問題に揺れる若者の実存的なことですよね。
別所:これは『芥川賞ぜんぶ読む』の中にも書かれているんですけども、吉行淳之介さんは選評で「どこを切っても同じ味がする上にやたらに長く、一旦読むのをやめた」としながらも「因果なことに、才能はある」としています。

・庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』

菊池:1969年に受賞した作品ですね。これは口語体で非常に読みやすいです。当時の高校3年生の「自分は大学に進学するのか、いやどうしようか」と揺れる心を描いたもので、非常にユーモアもあって面白いですし、読みやすくて非常にいいと思います。
別所:芥川賞は長くないからいいよね、基本的には長編がないから。

・モブ・ノリオ『介護入門』

菊池:おばあちゃんの介護をしている若者の話でして、それを全編ヒップホップ口調で書いているという、非常に面白い試みの作品です。
別所:ヒップホップ口調? 「Yo! Yo! Yo!」の世界?
菊池:そうです。非常に読んでいて楽しいというか、リズムを感じる作品です。それでいて「介護をしないきゃいけない」という若者が直面する現実ですとか、そういったものを切り取っていて、非常に読みやすくて、読んでいて深い作品だなと思います。
別所:選考委員の島田雅彦さんは「なによりもそのスタイルに魅力がある」と評しています。

今後、菊池さんは「芥川賞の『大きな流れ』をストーリー形式で紹介するもの」を執筆しようと考えているのだとか。菊池さんのわかりやすい説明は秋の夜長をすごす、読書の作品選びの参考となること請け合いなので、radikoのタイムフリーでぜひチェックしてみてほしい。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年11月7日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』
放送日時:月・火・水・木曜 6時-9時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/tmr

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