高倉 健、絶食して撮影に挑む…作家・沢木耕太郎が思い出を振り返る

作家・沢木耕太郎の『沢木耕太郎セッションズ<訊いて、聴く>』シリーズ。現在、『達人、かく語りき』『青春の言葉たち』『陶酔と覚醒』の3冊が刊行され、4冊目となる『星をつなぐために』は6月11日(木)に発売予定だ。

J-WAVEでは同シリーズと連動し、特別番組『J-WAVE SPECIAL SESSIONS〜沢木耕太郎、人を語る。』を4月29日(水・祝)にオンエア。沢木がこれまでにインタビューやドキュメント取材を行った、高倉 健、美空ひばり、井上陽水、武田鉄矢、草刈民代、檀 一雄、檀ヨソ子、モハメド・アリ、山野井泰史・妙子、尾崎 豊といった著名人のエピソードが語られた。

ここでは、高倉 健とのエピソードを紹介しよう。

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■「本当」を追求した、高倉 健の役者魂

沢木は、40年以上前になる武田鉄矢との対談と、そこで出てきた高倉 健との出会いを振り返った。武田は当時、映画『幸福の黄色いハンカチ』に出演して注目を浴びていた。対談では自然と、主演の高倉の話になったという。

沢木:高倉さん演じる主人公が刑務所から出所して、ビールとカツ丼を食べるシーンがあります。それを撮るために高倉さんは2日間くらい絶食して撮影に挑んだというんです。「本当に空腹の人の動きは満腹の人の箸の動きと違う」と。それで現場も一発撮りの空気がいきわたり、そのシーンを撮り終えたのを見て武田さんは「感動した」と言っていました。


■高倉 健からの突然のプレゼント

沢木は当時、高倉と面識がなかった。しかしその後、アメリカでおこなわれるモハメド・アリの“最後になるかもしれない試合”を観戦しようとしたことで、沢木と高倉の不思議な出会いが生まれる。

アリの試合を数多く観てきた沢木が、ロサンゼルスに住む友人にチケットを頼んだところ、「売り切れていて取れない」との返答がった。だが、しばらくすると友人から「本当は高倉 健さんのために取ってあったチケットだけど、高倉さんが『自分より沢木さんに譲ってくれ』と言ってくれた」と連絡が来て、観戦が叶ったのだという。

沢木:試合は予想通り、ラリー・ホームズにアリは滅多打ちにされてしまいました。ホテルに戻って廊下を歩くと、世界中のスポーツジャーナリストが試合について執筆するタイプライターの音が聞こえてきました。そこで僕は「本当なら高倉さんが観る試合なのに」と思い、高倉さんに宛てた試合の観戦記を長い手紙にして書きました。その1年後くらいに、会いたい人に相手の好きな場所で会うラジオ番組の企画ができ、1人目として僕がリクエストしたのが高倉さんでした。スタッフからは「出てくれるわけがない」と言われましたが、僕は出てくれそうな気がしたんです。結局、高倉さんは出演を承諾してくれて、北海道の牧場で馬を見ながら話をしました。そして高倉さんが淹れてくれたコーヒーを飲んで暖炉で暖まりながら。その数カ月後に僕のアパートに突然高倉さんが来て、旅行カバンをプレゼントしてくれました。北海道に行ったとき、僕のカバンがボロかったことを見かねたのかもしれません(笑)。


■タッチの差で間に合わなかった小説

沢木と高倉の縁はこれだけにとどまらない。その後、沢木のもとに高倉から「シナリオを書いてほしい」という依頼が来たのだとか。

沢木:「一緒に仕事をしたマイケル・ダグラスは、ひとつの仕事が終わって家に帰ると何十というシナリオが置いてあって、それを読みながら次の仕事を選べる。でも日本ではそんなことはない。1回くらいそういうことをやってみたい」ということでした。僕は頑張って書いたんですが、僕がいいと思うものと高倉さんがやりたいことがなかなか合わなかったんです。そのうち、だんだん高倉さんと会う回数が減り、高倉さんの時間もなくなりそうだったので「小説で書けばイメージがわかるだろう」と思い、小説で書きました。でもタッチの差で間に合わず、亡くなってしまいました。

沢木は「亡くなっていなくてもできなかったかもしれない」としながらも、「生きているうちに見せて、こんなのできねえよと言ってもらいたかったですね」と惜しんだ。

【番組情報】
番組名:『J-WAVE SPECIAL SESSIONS〜沢木耕太郎、人を語る。』
放送日時:月・火・水・木曜 6時-9時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/holiday/20200429_sp/ 
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