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サカナクションは“お金の使い道を透明化”し、ファンの信頼度を高めていく―山口一郎が語る新たな取り組み

サカナクションは“お金の使い道を透明化”し、ファンの信頼度を高めていく―山口一郎が語る新たな取り組み

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、不要不急の外出自粛が求められている。そんな今だからこそ届けられるエンタテインメントとは? サカナクションの山口一郎が自身の考えを述べた。

山口がゲスト出演したのは、5月3日(日)にオンエアされた、J-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。同番組の第一週目のナビゲーターであるライゾマティクスの真鍋大度と語り合った。状況を鑑み、今回の放送はリモートで収録された。


■この時代を歌にするためには、リアルをちゃんと知らなければいけない

不要不急の外出自粛要請により、日々の暮らしは大きく変化した。山口は過去に半年ほど誰にも会わない経験があったことから「リモートワークが自分に合いすぎちゃう」と明かす。

現在、サカナクションは「#夜を乗りこなす」アクションを展開中だ。ツアーの真っ只中に新型コロナウイルスの影響でライブの延期が続いた状況から、サカナクションのチーム全体が「ライブに来られなかった人たちに何か自分たちがアクションをしていかないと誠実じゃない」と感じ、このアクションが始まった。

山口によると、これまでのアクションの中でも、特にインスタライブが大きな気付きを与えてくれたという。ただ単に疑似配信ではなく、リアルタイムにどのように音楽を伝えるかが重要であり、「僕たちは新型コロナの状況でも音楽をしていかないといけない」と続けた。

山口:ボブ・ディランの『Blowin' in the Wind(風に吹かれて)』とか、時代の変革期に必ず名曲って生まれるじゃないですか。だから新型コロナの時代のことをちゃんと歌にするためには、リアルをちゃんと知らなければいけないなと思って。インスタライブを使って今の世の中をリサーチするというか、そうやって使い始めてから、自分たちの「#夜を乗りこなす」アクションの基軸ができていった感覚です。

サカナクションは、インスタライブで一般のさまざまな人たちと対談するなど、独自企画を展開している。山口は「こういった企画は大きな事務所に所属し、これまで露出してこなかったミュージシャンはやりにくいこと」と話しながらも、サカナクションは独自の判断でさまざまな企画を行っており、今この時代にうまく適応できていると語る。

山口:そういったことができるミュージシャンがこれからの時代に発信力を持ってくるというか、ある種の代弁者になれるような気がします。インスタライブで銀座のホステスの方やインドに出向したサラリーマン、高校生や小学生など、僕が普段あまり接することのない人と話すことで、音楽のネタになっていくというか。すごく健全な状況ではあるのかなと思っています。


■行動することで何を考えているのかを想像してもらうことが大切

日本国内におけるエンタテインメントのポップスやロックについて、山口は「サブカルチャー度が高い」と指摘。「社会における立ち位置がどうしても娯楽の領域から抜けない」と続け、海外と比較しながら持論を展開した。

山口:星野 源さんがインスタグラムで公開した楽曲『うちで踊ろう』と組み合わせて安倍首相が投稿した動画の件もそうですけど、僕らみたいなジャンルと政治が乖離しているんだなと思って。海外だとミュージシャンや音楽を政治利用するじゃないですか。日本のミュージシャンは反体制側であるべきだという傾向があるというか。

日本国内では音楽と政治を分ける傾向にある一方で、海外では反体制的なことを音楽で伝えることが、ミュージシャンとして健全だと思われる風潮がある。

山口:日本はミュージシャンもリスナーも音楽と政治を切り離しすぎている気がします。今は安全地帯からいくらでも石を投げられる時代なので、何か発言すると言うよりは、行動することで何を考えているのかを想像してもらうことが大切だと思います。


■「面白いことをやってくれそう」と思わせる期待度が信頼度になっていく

サカナクションは、特設サイト「NF NICEACTION」を展開。サカナクションの日々の活動に対して、「良いな」と思ったときに1口 100円(税抜)から応援できる仕組みを設けている。

https://sakanaction.jp/feature/nf_niceaction

山口:過去のライブ映像の配信をしたときに、「課金させてくれ」という声がめちゃくちゃあったんです。ライブには感動の地縁みたいなものと、感動の余韻みたいなものがあるなと思って。

「NF NICEACTION」は、リアルタイムではなく遅延型の支援システム。山口は「神社のお賽銭みたいなもの」と例える。

山口:みんなが支援してくれたおかげで「ライブが延期続きで仕事ができないスタッフの人たちに支援できました」とか「ホームページを充実できました」とか「真鍋さんにアプリ作ってもらいました」とか、何に投資できたかを発表できることもいいなと思って。だから、ファンは株主みたいになってきているのかな。不透明性なものをいかに透明化させるかみたいなことで「このバンドに寄付してもどうぜ外車買っていい服着るために使われるんでしょ」みたいに思われるのではなく、自分がちゃんと愛する音楽にちゃんと投資してくれる信頼度が、アーティストのブランディングやプロモーションにもなるかなと思っています。

今後の音楽シーンついて、山口は「『面白いことをやってくれそう』と思わせる期待度が、アーティストに対する信頼度になっていく気がする」と予想。

山口:今まではいいミュージックビデオとかコンテンツを作っても、全部ミュージシャンの評価に繋がっていたけど、これからはミュージシャンだけではなく、そのまわりにいる人たちの評価もちゃんとハッキリされていく時代かなと思います。だから、僕はチームって意識がこれから高まってくるように感じる。たとえば「真鍋大度がこのミュージシャンのプロジェクトに参加した」と知って、みんながドキッとするとか、「このスタイリストがこのミュージシャンに付いたから、こういう変化があるんだろうな」とか、そういう楽しみ方が増える気がするし、そこのリテラシーみたいなものを啓蒙していくのも音楽業界側の重要な部分だと思います。

最後に、山口は新型コロナウイルスで不安を抱えるリスナーに向けてメッセージを送った。

山口:今までは仕事でなかなか子育ての光景が見られなかったお父さんが、外出自粛要請を機に在宅することで子どもの成長が知れてよかったという声を聞いたりしました。この状況がマイナスだけではなく、これをどう活かすかは心の持ち様次第だと思います。ネガティブになりすぎずっていうのは横暴な言い方かもしれないけど、このときだからこそ見つけられる発見がたくさんあることを知ってもらいたい。新しい日常を見つけるチャンスだと思って、一緒に乗り越えて行けたらなと思います。

加えて「手洗い、うがい、無駄な外出を控えることもみんなで頑張っていこう」と、呼びかけた。

他にも番組では、これからのライブのあり方や、今後はファンクラブビジネスが主流になる、と山口が持論を展開する場面もあった。デジタル音声コンテンツ配信サービス 「SPINEAR」の他、Apple PodcastsやSpotifyなど各ポッドキャストサービスでは、今回のオンエアのノーカット版を配信中。濃密なトークを堪能してみては。

Apple Podcasts
Google Podcasts
SPINEAR

同番組は、各界のイノベーターが週替りでナビゲートする。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年5月10日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD ERA』
放送日時:毎週日曜 23時-23時54分/SPINEAR、Spotify、YouTubeでも配信
SPINEAR:https://spinear.com/shows/innovation-world-era/

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