悲劇を迎えるロードムービーを彷彿させる、Black Lips『Sing In A World That’s Falling Apart』

J-WAVEの番組作りに携わるスタッフたち。日々、ジャンルを問わず音楽を聴き続けているラジオ番組制作者たちの、おすすめの楽曲やアーティストを紹介します。(J-WAVE NEWS編集部)


■Black Lips『Sing In A World That’s Falling Apart』 (2020年1月リリース)

レコード店に行って、ジャケットから感じる雰囲気を頼りに何枚か購入し、家に帰って初めてそのサウンドを知る。自分のセンスに対して答え合わせをしていくようなこの瞬間はとても楽しい。ときには自分の好みでない、ジャケットからは全く予想外の音が流れてきて、一度ターンテーブルに乗せたきり、その後全く聴いていないレコードもある。そういう意味では、本作のジャケット表面のカルト感のある危険な雰囲気、そして裏面の笑わせにかかっているとしか思えない古臭い写真は私の購入意欲をそそりまくる。

Black Lips『Sing In A World That’s Falling Apart』
Black Lipsは1999年にアトランタで結成されたバンドで、今作『Sings In A World That’s Falling Apart』は通算9枚目のアルバムである。2017年の前作『Satan's Graffiti or God’s Art?』ではプロデューサーに Sean Lennonを迎え、彼とLes ClaypoolのユニットThe Claypool Lennon Deliriumよろしく、ヘビーでサイケな世界観を構築していたが、今作はそれに比べかなりソリッドでどこか牧歌的である。

アルバムは「Hooker Jon」という曲から始まる。13th Floor Elevatorsを思い起こすような、ザラついたサウンドはもはや2020年に鳴っているものとは思えない。そして、続く「Chainsaw」ではThe BandやThe Byrdsのようなフォーク/カントリーロックを聴かせる。聴き進めていくうちに、60〜70年代のアメリカの田舎町の情景が次々と浮かび、このアルバムの曲だけが使用されるロードムービーがあってもいいのではないかという妄想までしてしまう映画的な作品である。

ロードムービーの妄想をさらに煽るのは最後の曲「Live Fast Die Slow」かもしれない。哀れな少年ジミーに語りかける歌詞、そして曲が後半にいくにしたがってだんだんと不穏なノイズが挿入される展開。Goodbyeという言葉の後、少しのアウトロがあり、急に曲がカットアウトされ、このアルバムは終わる。どうしても、『イージー・ライダー』や『俺たちに明日はない』のような悲劇的な結末を思い浮かべてしまう。

■執筆者プロフィール

・盛口薫(もりぐちかおる)

担当番組
『SAPPORO BEER OTOAJITO』
『TAKRAM RADIO』

ラジオ番組制作者。初めて生で見た有名人はカイヤ。この春、大阪にある実家が諸事情のため消滅したので、行き場を失ったCDがダンボールに入って、現在住んでいるワンルームのド狭い部屋に積み重なっている。
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