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松居大悟、初小説『またね家族』をスマホで書き上げた理由は?「裸の言葉を出せる状態で…」

松居大悟、初小説『またね家族』をスマホで書き上げた理由は?「裸の言葉を出せる状態で…」

J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』(ナビゲーター:川田十夢)のワンコーナー「ROAD TO INNOVATION」。6月12日(金)のオンエアでは、劇団ゴジゲンの主宰で映画監督の松居大悟が登場。初小説となる『またね家族』や、新感覚ラジオドラマへの挑戦、監督を務めた映画『#ハンド全力』について語った。


■全てスマホで書き下ろした初小説『またね家族』

松居は5月に初小説となる『またね家族』(講談社)を上梓。川田は「いろんなモヤモヤしたものをちゃんと小説にしたことがすごい」と感想を述べる。

【『またね家族』の内容紹介】
父の余命は3カ月。
何者にもなれなかった僕は――
あなたの息子には、なれたのでしょうか。
小劇団を主宰する僕〈竹田武志〉のもとに、父から連絡があった。余命3カ月だという――。
自意識が炸裂する僕と、うまくいかない「劇団」、かわっていく「恋人」、死に行く大嫌いな「父親」。周囲をとりまく環境が目まぐるしく変わる中、僕は故郷の福岡と東京を行き来しながら、自分と「家族」を見つめなおしていく。不完全な家族が織りなす、歪だけど温かい家族のカタチ。
講談社BOOK俱楽部より)

松居:4、5年前に一回、小説を書こうと思って、1万字くらい書いてみたところで先に進められなくなって、当時の編集者に相談しました。「なぜ書けないんですか?」と訊かれ「映像や演劇のようにプロデューサーや役者が待っていないから、どこに向けて書いているかわからないから」と答えました。それで「何なら書けます?」と言われて「脚本なら書けます」と話して、その内容は作画の人に入ってもらって漫画になったんですけど。
川田:『またね家族』はスマホで書いたと聞きました。
松居:そうですね。全部スマホで書きました。前に小説にならなかったこともあったので、小説を書こうと思ったらおそらく書けなくなる。文学的な表現にとらわれたりして。だから友だちにLINEを送るみたいな、すごくフランクに、できるだけ自分の裸の言葉を出せる状態で書き出そうと思って、書き始めました。スマホのメモ帳機能を使って書いたんですけど、その機能は制限なく書けるから「これならいける」と思って最後まで書けました。

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■いままでは家族や恋愛のテーマは避けていた

川田は「劇作家が書く小説はト書きのようになる場合があるが、『またね家族』はそれを感じさせずに、心象も風景もわかれていない」と作品を評価する。

松居:小説を書いてていいなと思ったのは、セリフを言う前の迷いとかためらいとか言ったあとの後悔とかを文字にできること。僕はわりと頭で会話をするタイプで、口に出た言葉が、あまり意味がないことが好きだったりするから、そういう意味では小説は向いてるなと思いました。
川田:劇団は役者の肉体があるけど、小説はそれがないから感情が移る動機も完全に創作しなきゃいけないよね。舞台の台本と小説はどんな違いがある?
松居:台本は設計図だと思っていて、小説は頭の中の世界をどう言語化していくのかだと思っているので、作り方が違ったかもしれないですね。

松居は『またね家族』を書き下ろすまで、家族や恋愛を作品として触れてこなかったという。

松居:10年以上この仕事をやっているのに、家族や恋愛は避けてましたね。そういうテーマの依頼は来ていたけど、「それは俯瞰で書けないから」と意地になっていました。
川田:家族とか恋愛ってけっこう大きなモチーフだよね。
松居:なぜそのテーマを避けてきたかと言うと、「家族ってこうじゃん」って家族観を共有したくなかったんですよね。それによって「おまえの家族観は変だよ」って言われると自分が否定されているようでイヤだったんです。でも、この小説を書いたあとに「別にこだわることでもないし、正解も不正解もないな」って思えました。

■全方位から体感できる新感覚ラジオドラマを制作中

続いて、松居がナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組『JUMP OVER』の話題に。松居はこの番組で、立体サウンドを体感できる最新テクノロジー「バイノーラル」を使ったラジオドラマを制作中だと報告した。

川田:「バイノーラル」は右チャンネル・左チャンネルじゃなくて、音が空間を帯びているんですよね。
松居:前後左右上下の音を全て感じられる技術で、J-WAVEの放送環境ならそれが可能だということで、ラジオドラマを作ることになりました。
川田:「バイノーラル」のラジオドラマって大変?
松居:今まさに準備しているんですけど、(リスナーが)ぐるぐる回ったりすることによって体験できたりするもので、例えば授業中にこっそり隣の生徒が話しかけてきてドキドキしながら、でもうしろでは先生が歩いている、みたいなことを表現する場合は、実際にそれをしないと音が録れないから、手間がかかるというか。
川田:そういうシチュエーションを実際に作らないといけないわけですよね。大変だけど、そんな試みは聞いたことないからね。
松居:そうですね。やったこともないし、聴いたこともないから面白いと思います。

「バイノーラル」のラジオドラマはリスナーが主人公になれる感覚だと松居は説明する。

松居:VR(バーチャル・リアリティ)を体験した方ならわかると思うんですけど、例えば家族会議に参加したり、美容院で髪を切られている音が聴こえてきたり、目を閉じて聴くとそれがすごく体験できるように準備しています。

このラジオドラマは7月5日(日)にJ-WAVEの番組『J-WAVE SELECTION』で放送する予定だ。また、松居がナビゲーターを務める『JUMP OVER』(木曜 26時-26時30分)では、収録の様子もお伝えしていく。

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■SNSを見つめて作った映画『#ハンド全力』

松居が監督を務めた映画『#ハンド全力』が東京では7月31日(金)から公開となる。



【あらすじ】
熊本県の仮説住宅で暮らす清田マサオ(加藤清史郎)は、夢中になれるものもなく、高校卒業後の進路も決められずにいた。しかし何気なくSNSに投稿した写真でその生活は一変! それは三年前の震災直後、ハンドボール部員だった頃に親友タイチ(甲斐翔真)と撮った、ジャンプシュート中の“映える”一枚だった。投稿を直近の写真だと誤解した全国のユーザーから続々と応援コメントが寄せられ、「イイね!」の数は増える一方。舞い上がったマサオと幼馴染の岡本(醍醐虎汰朗)は、ハッシュタグ「#ハンド全力」をつけた投稿を続けることにする。

ハンドボールを頑張るフリをした写真や動画を“ねつ造”しては、「イイね!」が増えるよう、マサオたちは工夫と試行錯誤を重ねる。ついには噂を聞きつけた男子ハンドボール部長の島田(佐藤緋美)にスカウトされ、フォロワー戦略として入部することに!
最後のインターハイ出場に挑む島田のもとに、休部中の片山先輩(磯邊蓮登)やクラスメイトの林田(岩本晟夢)、マサオが密かに思いを寄せる女子ハンドボール部のエース・七尾(芋生 悠)を姉に持つ次郎(鈴木 福)、東京から来たダンサー志望の蔵久(坂東龍汰)が集まり、チーム7人が揃った。
果たしてマサオたちはSNSで廃部寸前の男子ハンドボール部を復活させることができるのか――!?
映画『#ハンド全力』公式サイトより)

川田:めちゃめちゃいい作品でした。なんでこんな作品が書けるんだろうと思ったね。今、ネットのタイムラインで流れていることって現実と隣り合っているようで隣り合っていないから、そのニュアンスがすごく出ていると思う。
松居:SNSがちゃんとフィクションに繋がっていないような気がしていて、SNSをちゃんと見つめて映画を作る人が世代的にもあまりいないからチャンスだとは思っていて。
川田:そういうものってネガティブに描きがちだけど、この作品はポジティブなもので、面白かったです。


■「今までにない表現をすること」に存在意義を感じる理由

映画などの映像作品、ラジオドラマ、小説……と、さまざまなメディアでものづくりをおこなう松居。その原動力は?

松居:自分に自信がないからこそ、人と関わって何かものを作り、僕と関わったことによって意味があったと思ってもらいたいから新しいことをしなきゃ、ってことをずっと続けている感じですね。本当の若者たちのコミュニケーションとかをフィクションに変えていったりすることに、昔の僕は救われていた気がするんです。『電波少年』シリーズ(日本テレビ系)とかGOING STEADYとか、音楽や舞台や映像とかに救われたから、今までにない表現をすることに存在意義を持っている感じなので、(それをすることで)生きていることを許してもらえるんじゃないかと思っています。

『INNOVATION WORLD』のワンコーナー「ROAD TO INNOVATION」は、各界のイノベーターやクリエーターを迎え、仕事へのこだわりや、挑戦し続けるための原動力を訊く。放送は毎週金曜の20時10分頃から。お楽しみに!

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年6月19日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD』
放送日時:毎週金曜 20時00分-22時00分
オフィシャルサイト: h https://www.j-wave.co.jp/original/innovationworld/

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